学校法人「奈良学園」(奈良県大和高田市)が、来春開学予定だった関西科学大(奈良市)の設置申請を取り下げた問題で、指定校推薦入学に22府県 の高3生261人がエントリー(応募)していたことが、文部科学省に提出した同学園の資料で分かった。定員(2学部計320人)の約8割に上り、推薦入学 を半数までとする同省の「大学入学者選抜実施要項」基準を大きく上回る。こうした実態を同学園は高校に説明していなかった。
高校関係者によると、指定校推薦は、9月ごろに各高校内の推薦枠に内定すれば、実質合格と受け止められる。
しかし問題を指摘した同省に対し、学園側は「全員を合格にするつもりはなかった」と説明したという。近畿高校進路指導連絡協議会の森本正作事務局長(和歌 山県立海南高教諭)は「高校側は(応募すれば)ほぼ100%合格できると認識しており、基本的な信頼関係が崩れてしまう。半数を超える受け付けは、大学の 姿勢が問われる」と話している。
定員はスポーツ科学部200人、看護学部120人だった。しかし同省によると、185校から計261人 (スポーツ科学部182人、看護学部79人)がエントリー。大半が近畿の高校からで、内訳は▽大阪102人▽奈良37人▽京都35人▽兵庫28人▽和歌山 8人▽滋賀5人--などだった。
同学園の伊瀬哲也理事長は毎日新聞の取材に対し「予想以上に応募があり、結果的に半数を超えた。申し訳ない。隠していたわけではない」と弁明した。【石田奈津子、花沢茂人、山本和良】
毎日新聞 2006年11月22日 大阪夕刊
関西科学大(奈良市)の設置申請取り下げ問題で、母体の学校法人「奈良学園」は25日、指定校推薦で入学予定だった高3生の進路確保のため、緊急進学対策室を同県大和高田市の学園本部に設置したことを明らかにした。神戸市で開いた説明会で生徒らに伝えた。
同学園は他大学の受験費負担や浪人した場合の予備校費負担、無償の受験指導などの対策を打ち出している。対策室ではこれらを具体的に進めるほか、生徒や父 母との個別相談や高校からの意見聴取、他大学の受け入れ状況のまとめなどにあたる。当初職員3人でスタートし、増員する。
同学園によると、生徒の受け入れに応じる大学は同日までに25校に増えた。うち18校は具体的人数も提示。高校での成績など一定の条件を設けている学校もあるという。
毎日新聞 2006年11月26日 大阪朝刊
来春に開学予定だった関西科学大(奈良市)の設置申請取り下げ問題で、同時期の開学を目指す他の11大学がいずれも指定校推薦のエントリー(応 募)を受け付けていなかったことが、毎日新聞の調べで分かった。文部科学省が例年11月末の認可決定前に募集活動をしないよう、申請時に交付する文書など で指導しているためで、母体の学校法人「奈良学園」(大和高田市)の学生確保活動の突出ぶりが明らかになった。
同省は、認可決定前のホー ムページ開設など広報は認めているが、不認可などの可能性を踏まえ、募集は一切認めていない。しかし、奈良学園は今年9月からエントリー名目で実質的な募 集を開始。高校から指定校推薦の希望者の氏名などを収集し、全国185校から261人を受け付けた。
これに対し、他の11大学は同省の強 い指導などを理由に、「高校側からの問い合わせにも認可まで待っていただいている」(兵庫・近大姫路大)という。「指定校推薦は前年度までの受験実績によ る高校との信頼関係に基づくもの」(三重・四日市看護医療大)と、初年度は指定校推薦自体を見送るケースもあった。
しかし、11月末では 既設校のAO入試(個性や意欲を判断する自己推薦入試)や指定校、公募推薦の締め切りが終了しているため、「早い時期の生徒はのどから手が出るほどほし い」と話す担当者もおり、「既設校のAO入試でも事前のエントリー制が導入されており、新設校だから駄目という問題ではない」という声も出ている。【中村 敦茂、石田奈津子】
毎日新聞 2006年11月25日 大阪夕刊
関西科学大(奈良市)の設置申請取り下げ問題で同大学の開学が10年度以降にずれ込むことが分かった。文部科学省の大学設置認可基準によるとペナ ルティーとして一定期間、設置申請を認めない事例に該当するため。申請を取り下げた学校法人「奈良学園」(奈良県大和高田市)が問題発覚後に説明してい る、「(1年遅れで)08年度の開学を目指す」という方針は事実上、不可能になる。
文科省によると、不認可期間は虚偽の重大性により、2 年未満、2~3年、4~5年に分かれる。2年未満となるのは虚偽内容が軽微なうえ、自主的に不正を公表・改善した場合などに限られるため、今回のケースは 少なくとも2年間は申請が認められない。申請は早くても08年10月以降となり、この時点では次年度開学を目指す申請(前年の4月末まで)も締め切られて いるため、09年度開学も無理という。
奈良学園の伊瀬哲也理事長は毎日新聞の取材に、「文科省から開学が10年度以降になるとは直接聞いていない。今は生徒の救済に集中するだけ」と話している。
同大学は「スポーツ科学部」(定員200人)と「看護学部」(同120人)の設置を計画し、指定校推薦には近畿を中心に185校から計261人が応募。し かし、学園側が文科省に提出した大学設置を決めた際の議事録に死亡、退任した理事2人の名があったため、同省は11月8日、学園側に不認可を伝えた。【石 田奈津子】
毎日新聞 2006年11月24日 大阪朝刊